Perio 歯周病治療
「噛み続けられること」を考える歯周病治療
歯周病は、歯ぐきが腫れたり出血する病気と思われがちですが、それは初期の症状であり、進行すると歯を支える骨が溶け、歯がグラグラになって抜けてしまう病気です。だからこそ、現在がどのような進行段階にあるのかをしっかりと見極め、症状に応じた治療を行うことが大切です。
初期段階は「歯を失わないこと」を第一に
検査の結果、初期の歯周病(歯ぐきの軽微な腫れや出血など)と診断された場合は、歯科衛生士と連携し、細菌の棲家である歯垢や歯石の除去をはじめ、口腔内のクリーニングや環境改善を行うことで進行を抑え、症状を改善します。
えっ?と思われるかもしれませんが、一度歯周病になると、現在の医療技術では「完治」することはできません。歯周病の治療は、その原因となる口腔内細菌をコントロールすることで進行を食い止め、症状を改善することが中心となります。
当院では、日本歯周病学会認定医、そして歯周病治療の基本である、お口の中のクリーニングの研鑽と各々の専門性の追究に努める歯科衛生士が在籍し、医院一丸となって患者さまの歯周病治療をサポートする体制を整えています。
重度歯周病は「噛み続けられること」も大切
歯がグラグラの状態まで進行した歯周病は、歯を支える骨が溶けてしまっていることが少なくありません。このような重度歯周病と判断された場合、当院では患者さまと一緒に、再生治療を含む治療方法を多方面から検討します。なお現在では、再生治療薬「リグロス」が保険適用となっており、保険の範囲内で再生治療を受けることも可能です。
しかし当院では、歯周病治療ありきで考えるのではなく、この先しっかりと患者さまが「噛み続けられること」に軸足を置いた治療方針をご提案することも大切にしています。
歯周病治療によってグラグラの歯がしっかりと固定し、硬いものでも満足に噛める状態が見込める場合、ご自身の歯を残す観点からも、各種歯周病治療は積極的にお勧めする治療方法となります。しかし、「歯を残すことはできるものの、硬いものをしっかりと噛むことができない」状態が見込まれる場合には、私たちは歯周病治療のみならず、インプラントなど他の治療方法も併せてご提案しています。
確かにご自身の歯を残すことは大切です。しかし、歯を残すことを目的とし、噛めない、もしくは噛みにくい状態がこの先ずっと続いてしまえば、それは好きな食べ物が満足に食べられないだけでなく、摂取できる栄養に偏りが生じ、生活習慣病をはじめとする全身の不調を引き起こす結果にも繋がりかねません。
「噛み続けられること」、それは生涯を通じた全身の健康を考えるにあたり、決して欠かすことのできない視点です。だからこそ当院では、患者さまご自身のお口でずっと「噛み続けられること」を起点に、その手段として歯周病治療が良いのか、それともインプラントなど他の治療が良いのか、時間軸をしっかりと持ちながら考え、患者さまとじっくりとご相談のうえ、より適切かつ患者さまがご納得される方法にて治療を行います。
実際の歯周病治療はこのように進みます
主訴 | 歯ぐきから出血。痛くて磨けない。 |
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診断名・主な症状 | カリエス・重度広汎性慢性歯周炎 |
年齢 | 38歳 |
性別 | 男性 |
治療詳細 | ・患者さま情報:前医で痛い目に合い怖い、音が嫌い(歯科恐怖症)。5~6年振りの歯科受診。 ・既往歴:なし ・初診時:H30.1.26 ・まずはブラッシングの強化。 初回プラークコントロール(PCRスコア-100%)。 1日2回、3分のセルフケア―を1日3回、5~10分に徹底。 ヘッドの大きめの歯ブラシを使用されており、患者さまにあった歯ブラシを処方しスクラビング法でブラッシングを指導。 縁上スケーリングを行なった。 ・2回目以降 プラークコントロールの確認。1日3回セルフケア―は患者さまの生活週間で1日2回が限界とのこと。5分は磨けるようになった。ある程度の縁上スケーリングと機械的歯面清掃(PTC)虫歯治療を3か月行なった。 麻酔下でのルートプレーニング(SRP)を8回。 |
治療期間 | 8か月 |
治療回数 | 29回(虫歯治療も含め) |
費用 | 全額保険治療 |
リスク・副作用 | 詳細ご説明を下記に記載。 |
重度の歯周病(重度広汎型慢性歯周炎)にお悩みだった患者さま
多数のむし歯と重度の歯周病にお悩みで来院されました。複数の歯に痛みがあり、磨くと出血があるため、あまり磨けなかった状態です。歯ぐきの際(きわ)をはじめ、多量に付着する歯石が確認できます。
歯周ポケット検査(歯と歯ぐきのすきまの深さ)は、歯ぐきの炎症が強く痛みがあるため、浅くしか測定することができませんでしたが、それでも測定した歯周ポケットの8割近くが4mm以上の深さに達し(健康な歯ぐきは1mm~2mm程度)、深いところでは7mm以上の深さがありました。また4割以上の測定箇所で出血が見られる状態でした。
治療開始
まずは、なぜ出血するのか、出血しないためにはどうすればよいのかをしっかりと説明したうえで歯磨き指導を行いました。また、知覚過敏により歯がしみるため、歯面を清掃した後に薬剤を塗布し、歯がしみる症状を抑えました。
そのうえで、痛みによる患者さまの体の負担を抑えるため、麻酔を行ったうえで休憩をとりながら歯石除去を進めました。
治療開始後約3か月
およそ3か月をかけて、歯石除去などを行いました。治療開始時と比べると、歯ぐきの炎症は落ち着きましたが、歯と歯ぐきの際(きわ)に、まだ歯石が残っています。
ここから8回に分けて、麻酔下でさらに歯石除去を進めます。
治療終了時(定期検診へ移行)
一連の治療を終え、定期検診に移行する時の状態です。当初、8割以上が4mm以上の深さに達していた歯周ポケットも、この段階では1割以下に減少し、出血箇所も4割以上から3割強に減少しました。
ここからは、病状が安定してきた歯周組織を維持するため、1か月程度の短い期間で様子を見る治療に移り、その後問題がないことを確認し、通常の定期健診へと移行しました。
むし歯や歯周病を予防し、いつまでも健康なお口を維持する定期検診・クリーニング。
学校では習わない、定期的なお口のクリーニングが必要な理由も紹介しています。
・治療内容によっては保険診療となることもありますが、自由診療(保険適用外)となることもあり、その場合は保険診療よりも高額になります。
・歯周病の基本治療で改善しない場合に行う歯周外科治療や歯周組織再生療法では、歯肉を切開するため、腫れや痛みをともなうことがあります。
・破壊された歯周組織は元に戻せないので、治療後歯肉が下がることがあります。
・治療によって歯肉が引き締まってくるため、被せ物と歯肉の段差が目立つことがあります。
・基本的に保険診療となりますが、自由診療(保険適用外)と併用すると保険診療ではなくなるため、保険診療よりも高額になります。
・すべての部位に適用できるわけではありません。
・歯周組織が再生するまで半年から1年ほどかかります。
・再生作用が強く、正常な細胞と同時にがん細胞も活性化させることがあるため、がんの方への使用は適しません。
「特定非営利活動法人 日本歯周病学会」は、歯周病学の臨床的経験を通して高度な歯周治療を行うために必要な基本的な知識と臨床技術を有する歯科医師に対して、「日本歯周病学会認定医」の資格を与えています。
○「日本歯周病学会認定医」資格取得の条件
・3年以上継続して学会正会員である。
・同学会の認めた研修施設に通算3年以上所属し、歯周病学に関する研修と臨床経験を有する。
・同学会学術大会における認定医・専門医教育講演を2回以上受講している。
・同学会が行う倫理に関する講演を1回以上受講している。
・認定医試験に合格している。
など
○「日本歯周病学会認定医」資格保持の条件
・5年ごとに更新を行う。
・施行細則に定める所定の単位を修得する。
など
詳しくは、「特定非営利活動法人 日本歯周病学会認定医 制度規則」をご覧ください。